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#32

若き都市農業のカリスマ

篠宮農園|東京都東久留米市
篠宮仁 さん

農業を始めた一番の理由は、やはり長男だったからです。そして小さな頃から面倒を見てくださっている近所の先輩方がいらしたので、すんなり入りやすい環境にあったことも理由の一つです。
企業の就職も考えなくもなかったけれど、どうせやるのであれば、最初から農業に就こうと思いました。もし就農前に企業に就職していようという考えが出たとしても、当時はバブルの時代だったので就職先には困らなかったでしょう。

家業を継いで最初は親の言いなりで嫌なこともありましたが、25年経った今は楽しくなってきました。以前と違い、販売方法が変わったことも大きな理由です。
市場出荷から量販店などで販売するようになり、より消費者様に近くなりました。お客様のお声が直接届くようになったのはとても嬉しいことです。

東京式をいち早く導入

今生産している農作物(春)は、ほうれん草・小松菜・大根・アスパラ。これからの時期は枝豆・とうもろこし・トマトなど。端境期に小松菜・水菜・アブラナ科の作りやすい作物を挟んでいます。
加工品はドレッシング・トマトジャム・紫大根の甘酢漬け。

一番力を入れているのは東京式栄養栽培システムをアレンジして育てているトマト(桃太郎)です。
東京式を取り入れたのはこの農園が初めてでした。東京式は大変ですが、病気が出た時に区画分けをしているので広がりにくいのが最大のメリットです。また畑の面積が減ってくるこれからは、ハウス中心の栽培になっていくでしょう。
そういう意味でもいち早く新しい方式を取り入れていこうと考えています。


“※東京式栄養栽培システムとは
直管パイプを組み合わせたフレームに給水シートや防根透水シートを取り付け、これにヤシ殻を入れて培地として利用。培地量を通常よりも多くし、ベッドの下に養液を蓄える養液槽を設けることできめ細やかな給液管理が不要になり、市販の「水分センサー付き灌水タイマー」だけで給液管理が出来るようになった。その結果、大幅な低コスト化を実現するとともにメンテナンスも容易になった。養液槽に溜まった余分な肥料は給水シートで再利用され培地は数年間の使用後に土壌改良資材として畑に戻すことができるため、環境への負荷が少ないのも大きな特徴。一般に行われている土耕栽培と比較して収量が高く、曲がりなどの不良果も少なくなる。
(引用元「東京都農林水産振興財団・農総研だより 」より抜粋)

こだわりは「土作り」

まずは品種。数多くある品種の中から、その時期に適したより美味しい品種を選ぶようにしています。
今、ニンジンだったら彩誉(あやほまれ)とかアロマレッド。
農産物の特徴は消費者に近いところで作物を育てているので、新鮮なものをお届け出来ることです。

生産方法でのこだわりは「土作り」。それに限ります。良質で有機質を多く含んだ堆肥を土に入れることで、土の団粒が形成され、野菜の根が縦横無尽に張れる環境を作ります。植物性・動物性の肥料をバランスよく入れること。人間の体と一緒ですね。
現在育てている農作物に関しては、収益性も考えて選んでいます。まずは経営として成り立たせないといけません、それでいて味の良いもの、見た目の良さにも注意を払っています。

そして「水」。東久留米市は、東京都で唯一「平成の名水百選」に選ばれるほど水のきれいな町です。地下水を汲みあげて灌水などに使用し、みずみずしい野菜作りに役立てています。

思わず手にするような工夫

出荷先は、スーパーなどの量販店や、マルシェが経営の8割を占めています。
販売の際に気をつけていることは、お客様に手に取ってもらえるようにパッケージに「ひとしの野菜」として自分のイラストをプリントするなど、特徴を持たせています。そして都市農業の最大の利点「鮮度の良い状態」で販売出来るように最新の注意を払っています。

地域・社会のために

地域のコミュニティの拠点になりたいですね。防犯・防災だけでなく人が集まれるところとして。住宅地の中で行う都市農業は周りの方のご理解・ご協力があって成り立っているところもあります。
ですので、年に一度は地域の人を日頃の感謝の気持ちを込めて、ご招待で収穫体験とBBQを行なっております。今までに他のイベントを含め10回ほど開催しております。災害時には井戸の水を生活用水として提供、ビニールハウスを避難所として解放する準備が出来ております。

また社会の一員としての役割を果たしていきたいですね。数年前から「社会適応訓練事業」で障がい者の方々にお仕事をして頂いております。
受け入れ側の心構えとして「頑張り過ぎないように。忘れないようにメモ。サポートの職員さんに出来る仕事、出来ない仕事の判断をしてもらう」などがありますが、皆様真面目です。見習わないと!と思うことが多々ありますね。お仕事をしている方には社会から必要とされている、生きがいを感じられると思って欲しいです。

野菜をもっと食べよう!

皆様には野菜をもっと食べて欲しいですね。特に地域のものに注目してもらいたいです。その一環として東久留米子ども食堂ネットワーク「こねっと」と連携をしています。

生活に困っている子だけでなく、子供が気軽に集まれる場所です。「孤食」でコンビニ弁当を1人で食べるより、新鮮な野菜を子供食堂でみんなと一緒に食べることは大切なことです。ブロッコリーを茹でただけのものがあっという間になくなった!と聞くと、嬉しくなりますね。

取材を終えて

篠宮氏は約5,400坪の土地を管理する、十数代にも続く生粋の農家さん。とても好青年、周囲に対する心配りもさることながら、カリスマ性もあり、ルックスもノリも良い。
「バブル世代にいた都内在住、六大学出身のイケメンがどうして3Kと言われる農業を継いだのか?」ここに私の疑問が集中した。
私の周りには家業を継がず、一流企業に就職し、そのまま世界で活動している方も多い。我が夫は大学卒業後、数年ほど他業種に勤めてから家業を継いだ。篠宮氏と同年代だ。
地元青年部の方々もほとんど一度どこかに就職してからの家業を継いだ方ばかり。
しかし篠宮氏は違う。あの時代に、一部上場企業に新卒で就職出来る条件が揃っていながら、そのまま家業である農業を継いだ。かなり珍しいパターンである。

その最大の疑問は、畑でお会いした時にすぐに払拭された。
そのお姿は、外でお会いしている時と違う「農家」さんの顔だった。長男だからではなく、きっと次男でも三男でも農家を継いでいたのだろうな、と感じた。
家業をそのまま継いだ本当の理由はわからないし、本人も当時の理由は主人同様、聞かれた時々違う答えをするだろう。
ご両親の姿を見て育ったからかもしれない。責任感だけかもしれない。
ただ一つ絶対に言えることは「農業に対して本気である同年代」ということだ。都市農業の難しさ、それでいて都市農業の大切さをわかっている本気の農家さん。継いだ理由なんてどうでも良くなった。
美味しい・安心・安全+社会に貢献。都市農園の枠を超えた取り組みを、持ち前の行動力で進めていく篠宮氏を東京のそして同世代の誇りにしたい。

畑でのインタビューを終え、普段着に着替えて、東久留米駅前で野菜ソムリエたちと一緒にビールを飲んでいる篠宮氏は、また私の知るイケメンお兄さんになっていた。このギャップがまた篠宮氏、そして「ひとしの野菜」のファンを増やす理由なのかもしれない。

住所   
東京都東久留米市
備考   
【取引先】
・サミットストア
・地産マルシェ
written by 橋場 朋美

チョクバイ!オフィシャルサポーター
野菜ソムリエプロ/フードコーディネーター/裏千家茶道助教授/JBAバリスタ/日本サンドイッチ協会公認ケーキイッチインストラクター/和ハーブアドバイザー/冷凍生活アドバイザー/小原流いけばな教授/着付け講師/食品衛生責任者 他

季節のおもてなし料理教室「Atelier Platine」主宰

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