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#14

人と野菜と生き物が行き交う、東京の里山で 明日に続く農業を。

あした農場|東京都町田市
渡辺 恒雄 さん

もともとはデザイン事務所やIT系制作会社などで働いていましたが、仕事で蕎麦屋の取材をしていたことなどがきっかけで食やその元の一次産業に関心を持つようになりました。会社員をしながら自分なりに農業の勉強をしたり、漁師になれないかと漁協に相談したりしたこともありました。残念ながらなれませんでしたが。

制作会社で働いていた時には、色々な企業やメーカーの商品の広告宣伝に携わるクライアント業務を行なっていたのですが、業務に追われる中でいつしか自分が本当にいいと思ったものを宣伝したいという思いが湧いてきたんです。
自分で商品を作る。納得のいくよいものを。そしてそれを自分で宣伝して売る。そんな生き方はできないかとい思ったときに、もともとの食への関心が結びつき、そうだ、農家になろう!と思ったんです(笑

「今よいだけではなく、未来にとってもよい」農場

そうして、8年ほど前に農的暮らしをする決意をし、生き方を変えました。
畑を借りたのは、町田の小野路というところです。ここは「にほんの里100選」にも選ばれた里山地域で、都心に近いながらも貴重な自然の残るのどかな場所です。
「今よいだけではなく、未来にとってもよい」そんな農業をしたいと思い「あした農場」という屋号をつけました。
妻と2人で、農薬や化学肥料に頼らず自然と季節によりそいながら米・麦・野菜を作っています。自家製の小麦で作るうどんやパンなど加工品も人気です。

普段の生活の一部にある野菜でありたい

農薬や化学肥料に頼らない農法ですので、手間がかかるし、ムラもあります。その手間や時間を全て利益に換算して値付けをしてしまうととても高額な商品になってしまいます。
そうなると、もともと食の意識の高い、経済的にゆとりのある一部の層にしか買えません。それは違うなあ、と。
私たちは、ごく一般の人、特にお子さんがいる方たちに普通に食べてもらいたいんです。普段の生活に寄りそいたい。なので経営的にも技術的にももっともっと工夫と努力をしていかなくてはと思っています。とても難しいことではありますが。

お客さんからの一言で救われました

作ったものは、あまり遠くへ出荷することはしていません。近くのお店やレストラン、マルシェなどがほとんどです。個人の方への宅配も近隣の方が中心です。
信念として見栄えにとらわれず、よいものを作ることが大切だと思っているつもりなのですが、デザイン現場に関わる仕事をしていたので、ついパッケージに手をかけちゃったりするんですよね(笑)。特にマルシェなどではお客さんにとって見た目もかなり重要なので、実際受けがいいんです。手に取ってもらえる。
自分の中では矛盾があったのですが、あるお客さんが、「野菜をすごく大事にしているのが伝わります」とおっしゃってくれて、すごく救われました。表層的な装飾ではなく、想いをちゃんと受け取ってくださっているんだと感じて安心しました。

農園でのさまざまな楽しみ方

農園では収穫体験イベントや、農業体験などやってます。ライブイベントもやりました。2匹の羊もいるので、エサやり体験などもできますよ。
農業体験では1区画ごとに貸し出して、レクチャーしながら四季折々の野菜を育てて収穫していただいています。
農具も貸し出しているんですが、皆さんいつからかマイ農具を持ち始めて、すっかり腰を据えて思い思いに楽しんでらっしゃるようです。

この畑のファンを増やしていきたい

季節に沿って色々な野菜を育てていますが、ブームは追わないようにしています。テレビなどで健康食として取り上げられると問い合わせが増える野菜があったりしますが、そういうお客さんは一過性ですから。それよりも、あした農場が好きだ、あした農場の野菜が好きだという人をどれだけ増やせるかが大事な気がします。この畑のファンですかね。
最初のうちは、有機とか、安心とか、農法をアピールしていたんですが、それも最近は特に言わなくてもよくなりました。
「美味しいですよ、食べてみてください」って言えるようになってきたんです。町田で農家になって5年、僕らが多少上手になってきたというのもあるかもしれませんが、それより土がよくなってきたんでしょうね。ありがたいことです。

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