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#53

agri.TOKYO都市のすぐそばの兼業農家

そらまめ農園|東京都世田谷区
関田和敏 さん

世田谷区の粕谷の住宅街に囲まれた一画にある、そらまめ農園。その名前はそらまめの鞘が上を向いて身をつける様子に由来しています。農園を管理してらっしゃる関田ご夫妻は、小さな面積の畑で様々な野菜を育てています。消費者のすぐそばでどのような農業を行っているのでしょうか。

兼業農家としての歩み

そらまめ農園の園主である関田和敏さんは元々農業を経験したことはなく、幼い頃にお祖父様が畑で農業をやっていたのを傍でみながら育ちました。お父様も洋ランの栽培をしており、将来的には和敏さんも実家の農業を継ぐようにと言われていたそうです。最初にご実家の農業を始めたのは和敏さんの妻の未歩さんで、ジュエリーデザイナーを退職した際に和敏さんのお父様の農作業の手伝いを始めました。それから数年後の2011年、3.11が起きたとき、和敏さんはちょうど転職をしようとしているところでした。また長男が震災の少し前に産まれていたことから、「自分達で食べるものは自分達でつくりたい」と強く思ったそうです。そこで和敏さんは転職先を常勤の仕事ではなく、実家の農業を継ぎ本格的に野菜栽培を始めました。

そらまめ農園の畑は、住宅地に囲まれた中にあります。

小さい畑で工夫を凝らして野菜を栽培!

和敏さんは週三日を畑での作業に費やし、週四日は精神保健福祉士として働いています。未歩さんと一緒に作業をすることもあれば、お互いが空いている時間帯で別々に作業をすることもあります。二人とも農業とは関係ない仕事をしていたため最初は農業のやり方が全く分かりませんでしたが、農業に関する本を読んだり農業をしている人から話を聞いたりするうちに学んでいきました。そして、徐々に自分たちに合ったやり方で農作業をするようになりました。例えば、農業を始めた頃は牛糞・鶏糞の堆肥を用いていましたが、虫が多く発生するなどのデメリットがありました。そこで米ぬか・菜種油・黒糖を用いた植物性のぼかし堆肥を用いるようにしました。これにより、虫は発生しなくなったといいます。

植物性の堆肥が入っている木箱

栽培している野菜はナス、そらまめ、水菜、カブ、ルッコラなど多岐に渡っており、有機農法を実践しています。畑の面積が小さいので、これらの野菜は密植して栽培しており、雑草が生えても青刈り(植物の根っこだけ残して草を刈ること)程度に済まして土壌中のミミズや微生物が共生できるようにしています。さらに、害鳥であるカラスを手なずけて、害獣であるハクビシンを追い払う益鳥にするなどアクロバティックな工夫もされています。

雑草と共生している野菜たち

そらまめ農園では4年前に東京都のエコ農産物認証制度100を取得しており、畑で育てている野菜の中で認証基準の存在する野菜はその認証が適用されています。また、そらまめ農園の野菜は他の市販の野菜に比べて日持ちが良いと評判です。一般的な野菜は時間が経ちすぎると腐ってしまうのですが、そらまめ農園で採れた野菜は水分を失うように枯れていくのだそうです。「有機農法でない野菜は(有機農法の野菜と比べて)脆弱性があるのかな」と和敏さんはおっしゃっていました。実際に枯れたカブの写真を見せてもらい、野菜の本来の力を出し切った姿に私はとても驚きました。このようにそらまめ農園では農園の規模は小さいながらも、様々な工夫を凝らして野菜を栽培しています。

日が経って枯れたカブ
東京都エコ農産物認証制度を取得していることを示す看板

温室内での栽培も

畑での栽培以外にも温室での野菜栽培も和敏さんは行っています。その中でも特に注目すべきなのは、化学農薬不使用かつ水耕栽培を利用したトマト栽培をしている温室です。そこで育てられているトマトを一つ頂いたのですが、皮がとても柔らかくしっかりとした甘さが感じられる味わいとなっていてとても美味しかったです。水耕栽培の興味深さを大いに実感しました。

トマトの水耕栽培×化学農薬不使用
本来の味が引き出されてとても美味しいミニトマト

栽培面以外での努力も欠かさずに

畑で採れた野菜は、主に地元の飲食店へ卸したり、近くの商店街のパン屋のギャラリーで販売したりしています。また年に二回ほど千歳烏山駅前で催されるマーケットへも出店しています。他にも、近隣の保育園の園児や和敏さんが指導をしているボーイスカウトの子供たちに畑で植え付けや収穫体験を体験してもらったり、同じ区内でエコ農産物認証制度を取得している農家の集まりでの勉強会に参加したりと、栽培以外の面でも様々な取り組みをしています。情報発信にも取り組んでおり、栽培の様子や収穫した野菜などをFacebook上やご自身のブログ上に投稿しています。

農業に対する想い・考え

兼業農家としてご実家の畑で農業を始めてから数年が経つ関田ご夫妻。この地で農業をしている原動力として、経済的な理由よりも自身の内面的な理由の方が大きいといいます。和敏さんにとって、収入面で農業ともう一方の仕事とを比べてしまうと、農業はその大変さに対して割に合わない仕事です。しかしながらそれ以上に、祖父の代から農業がおこなわれ続け、小さい頃から慣れ親しんだこの土地で農業を残していきたいという想いの方が強いとおっしゃっていました。所縁のある土地に対する想いというのは、その本人にしか分からない特別な想いがあるというのを改めて感じます。

未歩さんは、見た目が綺麗な野菜ばかりでなく多少いびつでも中身が美味しい野菜がもっと多くの人々に受け入れられた方が良いのではないかとおっしゃっていました。料理して加工してしまえば見た目はあまり関係なくなります。農産物の質をよく分かってくれる人が増えれば、農業を取り巻く状況もより一層良くなることでしょう。

また農業のイメージについて和敏さんは、「種から命を作る、人を育てるための一番大事な素材をつくる創造性に溢れた仕事」として捉えていってもらいたいと考えています。農業は生き物の力や天候や生態系の繋がりを使って農産物を生産します。この精巧な仕組みの部分にもっと多くの人々が注目して捉えるようになれば、農業に対するイメージもさらに向上するのではないでしょうか。

住所   
東京都世田谷区粕谷2-6-5
written by agri.TOKYO編集部
https://agri.tokyo/

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